2019/03/08
3月6日(水)
本日はヴィーンを離れ、最後の宿泊地、フランスの首都パリへと移動します。7時20分とやや早いホテル出発となりましたが、ドナウ川の向こうの朝焼けが見事でした。2日間お世話になったガイドの治田さんとは空港で別れを告げました。
万事遅れることなくスムーズにパリに到着すると天気は曇り。それでも朝の段階ではパリは雨と聞いていたので、嬉しい誤算でした。バスでパリ中心部へと移動し、レストランで昼食をとりました。メニューはラザニア、ローストポーク、クレープです。どれも美味しかったのですが、特にメインのローストポークは食べている間もずっと「美味しい」という声が絶えませんでした。
昼食の後は現地の日本人ガイドのイセキさんと合流し、バス車内で簡単なフランス語を教わりながら、サンジェルマン大通りを進み、セーヌ川を渡って最初の目的地であるルーヴル美術館へと移動しました。
今回の修学旅行最後の訪問都市であるパリの最初の見学場所は、世界で最も有名な美術館と言っても過言ではないルーヴルです。実は、ここルーヴルでは嬉しい再会がありました。昨年度のフランス人長期留学生のアレックスがわざわざ南部のボルドーからパリに駆けつけ来て、ルーヴルのサモトラケのニケの像の前で合流したのです。当時の同級生たちの何人かも今回国外修学旅行に参加しており、今日・明日の二日間、行動をともにすることになりました。
膨大な数の収蔵品をもつ広大なルーヴルなので、たった2時間で見られるものはごく一部となることは避けられません。今日も、西洋美術の歴史を追いかけながら、有名な画家の作品を重点的に見るという見学になりました。ルーヴルでは2班に分かれ、それぞれ女性ガイドのイセキさんと男性ガイドのタカツナさんに説明して頂きました。
実質的な見学を始める前に立ち寄ったのは、地下に残る中世の要塞時代のルーヴルの遺構。そしてこの地下部部から階段を上がっていくと、まず目に飛び込んできたのが古代彫刻の傑作ミロのヴィーナスです。ミロのヴィーナスの写真は生徒もこれまであちこちで見てきたことと思いますが、ほとんどが正面ばかりだったと思われます。この彫刻を左右や背後からみることで、上半身を軽く捻った独特の姿勢が醸し出す品格の素晴らしさを生徒は感じることができたのではないでしょうか。
そして、さらに上階に上がり、ニケの前でアレックスに再会した後は、イタリア・ルネサンスの絵画を見学しました。ボッティチェリのフレスコ画に始まり、チマブエ、ジョットの宗教画、ウッチェロの極端な遠近法の作品を見た後は、いよいよレオナルド・ダ・ヴィンチです。「洗礼者ヨハネ」、「岩窟の聖母」、「聖アンナと聖母子」などの作品を通じて、レオナルドの優れたスフマート(物体の輪郭を明瞭な線で描かない画法)について、ガイドの方から詳しい説明を受けました。その後は、昨日ヴィーンで見たのとよく似た構図の同じくラファエロの聖母子像を見た後は、世界で最も有名な絵画であるレオナルドの「モナ・リザ」の部屋へ移動。しかし、ここはまさに黒山の人だかりで、それも多くの人たちは鑑賞するというよりはスマホを向けて写真を撮っているという状態でした。世界一有名な絵画が、美術作品として幸福なのか、少々疑問を持った生徒もいたようです。
実は、現在ルーヴルには閉鎖中の部屋がかなりあり、例年ですとこのイタリア・ルネサンスの後はフランスの18〜19世紀前半の作品を見るのですが、それの多くが見学不可となっていました。アングルの「グランド・オダリスク」やジェリコの「メデューサ号の筏」、ドラクロアの「民衆を率いる自由の女神」などを見ることはできましたが、生徒が楽しみにしていたダヴィッドの「ナポレオンの戴冠」のある部屋は閉鎖中でした。ただし、この作品は作者ダヴィッド自身による複製を明日ヴェルサイユで見ることができるはずです。
ここまでですでに90分以上が経過。残り少ない見学時間ですが、生徒の強い希望もあり別棟にあるフェルメールを含むオランダ絵画のセクションに向かいました。ルーヴルはフェルメールを2作持っていますが、この日見学できたのは「天文学者」のみ。昨日のヴィーンの地理学者とあわせて、たったの二日間で、世界に三十数作しかない希少なフェルメール作品を2枚も見ることができました。それも女性を描くことが多かったフェルメールの数少ない男性を描いた2作です。国外修学旅行の醍醐味の一つがこのあたりにあります。実は今回はじっくり見ることができませんでしたが、フェルメールのある部屋の2室向こうには、ルーベンスの非常に有名な連作「マリー・ド・メディシスの生涯」があります。生徒には、将来二度でも三度でもルーヴルに来てほしいところです。
ルーヴル美術館のあとはノートルダム大聖堂へ向かいました。バスでルーヴルのガラス張りのピラミッドのある中庭を抜けて、オペラガルニエ(オペラ座)やコメディ・フランセーズ(王立劇場)といった名所を横目に移動しました。
ノートルダム大聖堂は13世紀に完成された建築物で、ユネスコの世界遺産にも登録されています。ヴィーンで見学したシュテファン大聖堂も基本はゴシック様式でしたが、こちらも同じくゴシック様式の建物です。時間が遅かったのと曇天であったため、晴天で見られるステンドグラスの鮮やかさを体験することはできませんでしたが、ちょうどミサの時間であったため、大規模な儀式を目の当たりにした生徒は、大聖堂の厳かな雰囲気と荘厳なオルガンの音を十二分に味わっているようでした。また偶然ですが丁度よくノートルダムの鐘の音を聴くこともできたため、さらに感銘を深めたようでした。さらに、ゴシックと言っても、ドイツ語圏のヴィーンとフランスとでは、大分雰囲気が異なることもわかってきたのではないでしょうか。
夕食をとるレストランへと移動中、これも運よくエッフェル塔のシャンパンライトが遠くから見えました。食後にはここを訪れるため、生徒の期待は嫌でも高まります。夕食のメニューはチーズのパイ、ビーフブルギニョン(牛肉の煮込み)、カスタードプリン。フランスらしい内容です。
そしていよいよ本日最後の目的地、エッフェル塔へ。現在ではパリを象徴するような存在ですが、1889年のパリ万博のために建築されたものですから、19世紀末の建物です。当時としては、世界最大級の鉄を使った構造物でした。かつて赤やその他様ざまな塗装を施されたこともあるエッフェル塔ですが、20世紀以降は現在のような茶色(エッフェル・ブラウン)になりました。夜になるとライトアップされ、正時にはシャンパンライトと呼ばれるきらきらと泡のはじけるような輝きを放ちます。今回見学するのはまさにその輝くエッフェル塔でした。
残念ながら小雨が降っていて、期待を胸に二重のセキュリティチェックを受け、エレベーターを乗り継いで高さ約276メートルの最上階へ上がり、外に出てみると風雨が強くさすがに少し大変でしたが、それでもエッフェル塔から見下ろすパリの夜景とエッフェル塔自身から発するサーチライトの青い光の美しさは格別だったようです。生徒たちは多少濡れながらもその景色を堪能していました。
エッフェル塔を出たのは22:40ごろ、昨日に引き続き遅い時間になってしまいました。今日明日は連泊となるため明日の朝は少しゆっくりできます。生徒もしっかり体を休めてほしいと思います。